井原市七日市町の内科・小児科・皮膚科 ほそや医院

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縮景園への散歩 - ほそや医院

 わたしは今日も朝9時過ぎにマンションを出て広島駅前大橋を渡りそこを右折して猿猴川沿いの桜並木をとぼとぼと縮景園を目指して歩を進めている。広島市内を流れる川は太田川から分流した猿猴川、京橋川、元安川、本川、天満川、福島川そして山手川の7つの川がある。わたしは小学生のころ4年生まで鷹野橋町に住んでいた。当時住んでいた家は銀行の官舎で市電の鷹野橋駅から歩いて5分くらいのところで、すぐ近くに元安川があった。川と言っても潮の満ち引きの関係で水がないときは堤防から飛び降りる遊びをよくしていた。また、近くの橋の上から魚釣りもよくした。川でもボラやハゼ時にはチヌもつれた。子供の頃の思い出が強くて井原に来てもいつかは広島に住んでみたいと思っていた。偶然十数年前に広島駅南口の都市開発でタワーマンションが出来るという情報があったので9年前に購入し今では井原と広島の二重生活をしている。

 縮景園は江戸時代の1620年に広島浅野藩初代藩主が庭園として造ったもので1945年原子爆弾により壊滅したが復興した。入場料200円であるが70歳以上は運転免許証の提示で無料である。わたしはここを我が家の庭と思いとてもよく利用している。それこそ、春夏秋冬四季折々の景色を楽しんでいる。春は桜と梅、夏はヤマボウシ、秋は睡蓮と紅葉そして冬はサザンカとロウバイがわたしを和ませてくれる。

 猿猴川に隣接した緑道公園でよく見かけるアプリコットのトイプードルを連れて散歩している女優吉行和子さんに似た女性と軽く会釈をして、一言二言話して歩を早めると上柳橋交差点の手前に秀玉稲荷神社がある。ここは私が散歩をするときはいつも必ず立ち寄る所である。ここには、小さな拝殿と両脇には二対の御影石でできた狐が鎮座している。その狐は赤い毛糸で作られた帽子をかぶっている。お参りするとここでは書けないがもろもろの相談をする。長いときは10分程度お願いをして帰り際に狐君の頭を軽く撫でて帰るようにしている。京橋川に架かっている上柳橋を渡り今度は京橋川沿いの緑道公園をまっすぐ進む。天気が良いと備え付きのベンチに座って川面を見る。ある時は白く輝いて見えるときもあればセピア色に見えるときもある。しばらくの間川面を見ていると75年生きてきた来し方を走馬灯のように思い出す。視力が低下してやむなく白内障の手術をしたことや昨年あたりから夜間にトイレに2回は目が覚めるようになったこと。若いころはメモなど取らなくてもすべて記憶していたが最近は大事なことも忘れるようになった。そして、つまずくようにもなった。老化が進んでいることが否応なしにわかる。老化を悲しむのではなく受け入れて楽しく過ごそうと考え直してベンチから腰を上げた。再び歩き出して幟町中学校の正門付近で生徒さんの校内放送を聞きながら縮景園の正門にたどり着く。いつものように運転免許証を入り口で見せて中に入る。正門を入ると見事に咲いた赤いつつじと青いアジサイの花がわたしを歓迎してくれる。そして、真っすぐに濯纓池(たくえいち)に向かう。この池の水は京橋川から引いているので淡水と海水の混ざった汽水なので錦鯉もいるけどボラやチヌもいる不思議な池である。池には二つの島があってカメが甲羅干しをしている。この池を見ていると何故だか「涅槃寂静」の世界にいつしか入り込んでしまう。