井原市七日市町の内科・小児科・皮膚科 ほそや医院

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瑞雲 - ほそや医院

私達夫婦は11月20日の午前11時頃に宮島の獅子岩展望台から北東の方向の空になんと記憶のある限りでは初めて瑞雲を見た。それはちょうど天使がピンクの帽子をかぶり青色と黄色のラインの入ったようなドレスをまとっているように見えた。以前に私は何かの雑誌の記事で瑞雲(彩雲ともいう)のことを読んだことがある。それによると、何といっても瑞雲を見るとそれは良いことの前触れと言われている。この様な縁起の良い瑞雲がどのようにして発生するのか少し調べてみた。上空の比較的薄い雲がその縁に沿うように赤、黄、青などの色に分かれて見える現象を彩雲と呼び、この現象は太陽の光が雲の粒を回り込んで進むことにより発生すると言われている。夕焼け空が赤く見えるのも太陽光が大気を通過する距離が長くなると波長の短い光は途中で吸収され、波長の長い赤色だけが届くので夕焼けは赤く見えるのだ。それにしても我々が身近に観察する色々な自然現象もこの様な幾多の偶然に支配されていることを思うと何故か跪拝したくなるのは私だけであろうか。
実は世界遺産の厳島神社のシンボルの大鳥居の70年振りの大規模改修が終了したことをニュースで知ったので紅葉狩りも兼ねて宮島を訪問しようと計画した。鳥居に最も近いホテルの予約もとれたので19日昼から車で宮島に向かった。幸い天気も良く、紅葉谷公園の紅葉は見事だった。そして、ロープウエーから見晴るかす瀬戸内海の絶景と眼下に見える原始林は私に天幸を与えてくれた。
ホテルの朝食前に千畳閣、五重塔そして厳島神社辺りを散策した。大鳥居の前に佇み海面から聳え立つ赤い大鳥居を見ながら、心理学者S・ピンカー氏(1954年カナダ生まれ。米ハーバード大学教授)の今後の世界の予測の対談を思い出していた。これまで経験したことのないコロナ禍の生活で確かに日本経済ばかりでなく社会の一番小さい集団である細谷家族、ほそや医院のスタッフ、井原医師会そして岡山県、日本国すべてで重大な影響を受けた。それに追い打ちをかけるようにウクライナ戦争の惨状。考えてみれば、1917年のスペイン風邪も乗り越え現在がある。進歩の過程では、停滞や後退が必ず起こる。しかし今年が去年より悪かったからこのままずっと悪くなり続けて200年の進歩を帳消しにしてしまうとは考えにくいとピンカー氏は発言している。また、ジャーナリズムには悲観主義的なバイアスが組み込まれている。良い出来事はニュースに取り上げられなくて日々少しずつ進歩していることが新聞の見出しにならないのも実に困ったことだ。彼の新著「人はどこまで合理的か」(橘明美訳、草思社)では、人間が持つバイアスを是正して合理的な思考をするための方法が書いてある。それによると、合理性とは目標を達成するために知識を使うことと定義している。また、合理性を学ぶとは「現実の法則」を知ることだと書いてある。これは世界をよりよくしていく唯一の方法で、確率論やゲーム理論、相関と因果を見分ける方法と言った合理的な思考のための道具を使いこなせたら、私達は理不尽を減らせるとピンカー氏は述べている。そして、我々が瑞雲を見たおかげできっと皆さまに令和5年は僥倖をもたらせてくれることだろう。
令和5年は我々が瑞雲を見たお陰で皆様方にとってもきっと良い年となると確信する。